昭和風のサムネイルからこんにちは
24年12月に突如発表された「Voxon VX2」というディスプレイは「裸眼」「上下左右360°」「複数人」でも3Dに見える完全な3Dディスプレイです。いわゆるスターウォーズに出てくるような3Dホログラムの表示が可能だとのこと。
Voxon VX2が発表される前から断片的な動画や展示会でのレポートは上がっていて、私自身3Dディスプレイを現在作ろうとしているので参考にしていたのですが、ついに市販されてしまったなという感じです。(まあ作ることは継続するのですが)そのため、構造に関しては思うところがあり、情報の整理も兼ねて詳細な構造やスペックを分析します。ちなみに日本円で約100万円。
Voxon公式ページ:https://www.voxon.co/
日本語の紹介記事:https://gigazine.net/news/20241218-voxon-3d-volumetric-hologram/
スペック
公式サイトが公開しているスペックを書き出してみます。
Voxon VX2 は、現在入手可能な最も高度な 3D ボリューム ディスプレイで、空中に浮かぶ真の 3D ホログラムをレンダリングでき、メガネやヘッドセットを必要とせずにどの角度からでも見ることができます。精密に設計されたデュアル高速 LED アレイ (900 RPM で回転) と特注のボリューム グラフィック エンジンを備えた VX2 は、どの方向からでもはっきりと見える、ダイナミックでカラフル、インタラクティブな 3D ビジュアルを作成します。
1 回転ごとに、Voxon の高速グラフィック エンジンが各 3D ジオメトリ シーンをボリューム スライスの円筒形配列に変換します。これらのスライスは、驚異的な 7,400 フレーム/秒で VLED マトリックスに送信され、表示されます。
VX2 SDKの機能
64 ビット Windows DLL を使用した 3D 関数呼び出し
Unityプラグイン
多数のサンプルプログラムを備えたSDK
シミュレーターモード
サポートされているメディア
OBJ、STL、PLY、KV6、ZIPアニメーション
最適化されたバッチボクセル機能
テクスチャマップされたポリゴン
FBX、GLTF、GLBのサウンド付き再生
含まれるアプリ
3Dアニメーションとファイルビューア
オーディオビジュアライザー
水族館デモ
3Dレンダリング仕様
ディスプレイ容積: 直径256mm x 高さ256mm
ボリュームリフレッシュ: 30 ボリューム/秒
ボリュームあたりのボクセル数: 800 万
色: RGB VLEDマトリックス
軸方向閉塞:直径12mm
電気的特性
電源要件: 36VDC、120W
平均消費電力: 65W 通常
入力: USB 3.0 タイプ B x 1
出力: USB 2.0 タイプ A x 2
製品サイズと重量
直径: 300mm
高さ: 500mm
重量: 12kg
PCの要件
Windows PC / ラップトップ
オペレーティング システム: Windows 10/11
インターフェース: USB 3.0 ポート
CPU: x86-64 w/AVX2 (Intel: 第 4 世代以降、AMD: Ryzen+ など
3Dを表示する仕組み
公式FAQに記載がありましたが、LEDマトリクスディスプレイを回転させてその残像で表示するバーサライタ(Persistence of Vision)タイプです。扇風機のように回転して空中平面映像を投影する3Dホログラフィックファンというのがありますが、その回転する部分を棒ではなく平面にした感じですね。
↓同じ仕組みであろう”自作”の3Dディスプレイ試作機
【参考】3Dホログラフィックファン(この名称の正確性については議論の余地あり)
3Dホログラフィックファン(バーサライタ)について知りたい方はこちらもオススメ
仕様についての調査と考察
仕様を考えるうえで注目すべきは公式のスペックの中の以下の部分です。
900 RPM で回転
7,400 フレーム/秒
ディスプレイ容積: 直径256mm x 高さ256mm
ボリュームリフレッシュ: 30 ボリューム/秒
ボリュームあたりのボクセル数: 800 万
軸方向閉塞:直径12mm
LEDディスプレイの解像度
ボクセル数800万というのは3Dで表示できる総ピクセル数のことだと思われます。なのでLEDディスプレイの解像度の縦×横×一周の分解能=800万ということになります。一周の長さは256×3.14=803.84mmです。LEDディスプレイの解像度と一周の分解能が公表されていないので推測になりますが、私だったらディスプレイの解像度と一周の再縁部の解像度はある程度揃えるのでLEDのピッチをpとおくと、縦×横×一周=(256/p)×(256/p)×(256*3.14/p)=800万、p=1.87mmとなります。一辺256mmで区切りが良いのはp=2mmというのが妥当な所だと思います。p=2で800万ボクセルになるのは縦×横×一周=128×128×488(一周のピッチは1.65mm)です。
さらに7,400フレーム/秒というところから後述する15回転/秒で割ると一周の解像度は493となります。8で割れるキリの良いところで一周496であると推定します。ということでディスプレイのピッチはp2でVoxonの解像度は縦×横×一周=128×128×496(ボクセル数813万、フレーム数7440、一周のピッチは1.62mm)辺りが妥当かなと考えます。
フレームレートについて
動画の切り替えスピードであるフレームレート(fps)ですが、ボリュームリフレッシュ:30ボリューム/秒と同じだと思われます。一方でバーサライタの最大fpsは回転数x羽の数となります。回転数は900rpmなので、一秒あたり15回転です。なので羽の数は2枚となります。Voxonの場合はLEDディスプレイが裏表で2枚で貼り合わせてあるものだと想定されます。
このことには根拠があり、「軸方向閉塞:直径12mm」です。これは推測するに中心部12mmの範囲は描画ができないということだと思われます。なので、厚みが12mmのLEDパネルを回転させていると考えるのが妥当です。ちなみに動画内でちらほら見える「やたら解像度が高くて単色な3D映像は」VX2ではなくVX1のが混じっています。(VX1は方式が異なります。)
カラー表現
Voxonはどのくらいのカラーbit数を表現できるのでしょうか?これはスペックには明記されていません。Q&Aにはこのように書いています。
Voxon VX2はフルカラーイメージを表示できますか?
はい、Voxon VX2 は、鮮やかなフルカラー画像を表示することができます。 VX2 の LED アレイは RGB LED で構成されており、これを制御して幅広い色に近似したディザ パレットを生成できます。この機能により、VX2 は視覚的に美しく、本物そっくりの複雑でカラフルな 3D 画像をレンダリングできます。カラフルなアニメーション、詳細な科学モデル、芸術作品のいずれを表示する場合でも、VX2 は鮮やかで没入型の視覚体験を提供します。
ただ、仕組み的には3bitカラー(8色)なのかなと考えています。というのもこう言ったフルカラーLEDはRGBのLEDが独立して光るのでR/G/Bのオンオフで表現できる8色は出すことができるのですが、もっと細かい色の表現をしようとすると高速で点滅させることで実現します。ただ、バーサライタだと点滅している間に回転して位置がずれてしまうので、この方式は相性が悪いです。回転スピードよりもさらに速く点滅させることができればもっと多くの色を表現できますが、3bitでも30fps×496=14,880回/秒で切り替える必要があります。なので3bitか多くても6bitかなあと考えています。
現在確認できている色
・黒
・オレンジっぽい赤
・緑
・青
・紫(赤と青の混合)
・水色(青と緑の混合)
・黄色(赤と緑の混合)
・白(赤緑青の混合)
※6bitであればこれの中間色が再現できます。
カラーbit | カラー数 | 点滅回数(回/秒) |
---|---|---|
3 | 8 | 14,880 |
6 | 64 | 3万 |
12 | 4096 | 6万 |
24 | 16.8万 | 12万 |
その他判明しているスペック
・周りの透明カバーはアクリル
・USBにはLeap Motionのようなジェスチャーで操作できる機器を接続することができる
・PCとの接続はUSB3.0 (USB3.2 Gen1?)
その他判明していないスペック
・回転部分への電源供給方法(スリップリング?)
・回転部分への通信方法(無線orスリップリング?)
・LEDディスプレイの制御方法
最後に
まだまだ高価ですが、展示会や博物館などから普及しそうなこのタイプの3Dディスプレイ。先を越されてしまいましたが、2025年の目標はこのタイプのディスプレイを自作します!ヨロシク!
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